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●2007年06月23日(土)
僕が楽しみにしていた映画が2本あった。日本のお笑い界トップ2人が作った映画、そう、今週は『監督ばんさい』と『大日本人』です。 まずは北野武監督『監督ばんざい』。世界の北野が、自分の作品を全てゼロにしたいと考えたハチャメチャな作品。もうギャング映画を撮らないと決めた北野監督が小津風な映画や韓国風恋愛もの、SF、忍者時代劇と作り、ことごとく失敗するという内容。 僕は『菊次郎の夏』が北野映画ベスト3に入るほど好きな作品だから、結構気に入った。でも、ほどんどの人が「訳がわからない!」と言ったことだろう。 後半、だらけ始めたとき、僕は井出らっきょ演じる井出博士にはまってしましった。ロケットの中から宇宙人の格好で現れ、「私はウ、チュージンです!」と叫んだ時はひとり大爆笑だった。そして、「タケちゃん、懐かしいね〜。菊次郎以来8年ぶりだねぇ〜。」という言葉に少ししみじみきてしまった。 最後に全てが爆発し、『監督ばんさい』の文字が英語で出できた時、全てをぶち壊し、一から撮り直しと考える北野監督の気持ちが伝わるようだった。 もう一本は松本人志監督『大日本人(だいにほんじん)』。松本初監督作品は、特撮ヒーローものだった。 松本演じる大佐藤は、獣(じゅうと読む。怪獣ではない。)が出現すると防衛庁の命により巨大化し、大日本人となって退治する。普段は手取り20万と副収入で生活し、奥さんとは別居中、8歳の娘がいるといった設定。話は大佐藤のドキュメント番組撮影といったかたちで、大佐藤や彼を取り巻く人たちのインタビューにより話は進んでゆく。もうこれが松本ワールドで、馴染める人は笑えるのだが、この映画も好き嫌いが激しく出そうな作品だった。 獣との戦いシーンは良く出来ているし、この人が獣か!(海原はるか師匠、竹内力、板尾、原西など)と探すのも楽しい。でも、何故か僕は獣との対決シーンよりも大佐藤の日常に笑えた。「あの、場合はしかたなかったんだよ。」とUAにつぶやく標準語の松本がおかしくてしかたがなかったし、赤い獣に負けて、鼻を潰されインタヴューを受ける姿は大爆笑だった。 酔っ払って街中を歩くシーンに中村雅俊の「ふれあい」が流れるシーンは哀しみの中に笑いがあるといった松本監督の意図を感じた。 両作品で2人の監督は役者としてむやみに喋らない。松本はインタヴューだからしかたなしに答えている感じだし、北野に関しては、映画全体で10分も喋っていないんじゃないかな。 そこには監督としての主観と役者としての客観があるような気がする。主役である監督自身を中心とは考えず、あくまでも周りの状況(時には役者であったり、CGであったり)に動かされている主役である自分を、客観的に撮る。 撮影に関しても、きっとこだわって何度もテイクを重ねるようなことはせず、2、3回でOKが出てそうだ。でもそれも彼らの持つ感性で撮影しているのだから、それで良いのだと思う。何度もテイクを重ねて、良い作品を撮る監督もいるが、芸人監督が撮る映画には一発OKの緊張感が必要なのかもしれない。(役者は本当にこれでよかったかと疑心暗鬼に陥るかもしれないが。) 両方ともが正直グダグダな映画なのだが、何故か後で思い出すとジワジワ笑えてしまい、そして、あと半年後にもう一回観たいと思わす。僕にとって両作品とも琴線に触れる映画でした。 とはいえ、好みはあります。嫌いな人もいるでしょう。吉田戦車のマンガが好きなインテリな人は観てください。 以上、店長でした。
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